日吉大社と日本茶
日本茶は今から約1200年前、延暦寺を開いた平安時代の僧・最澄が唐より茶樹の種子を持ち帰り、比叡山麓の坂本(現:滋賀県大津市)に植えたことに始まるといわれています。
日吉大社が程近い京阪石坂線・坂本駅前には、最古の茶園を開いたという最澄ゆかりの「日吉茶園」があります。お茶の樹が20本ほど植えられている僅かなスペースですが、最澄が現在の大津地域の出身であり、また、一帯で古くから信仰されていた神々を崇敬していたためにこの地を選んで植えたという説があります。現在、日吉大社では毎年の祭礼の中で日吉茶園にて摘まれたお茶を神輿に奉納する「献茶祭」を行い、1200年以上にわたりこのエピソードを現代に伝えています。
茶来未新工場の操業にあたり、これを祝福し今後のつつがない操業と安全を祈願するために「火入れ式」を執り行いました。「火入れ式」は「火入れの儀」「点火の儀」とも呼ばれ、新しく神棚を設置する際や、家屋建造の際かまどに初めて火を入れる際に行う儀式です。日本茶の歴史と深く関わりのある日吉大社から権宮司の井口健 氏をお招きし、つつがなく神事を執り行うことができました。
茶来未が操業する藤沢市には「御所見地区」と呼ばれる地域があり、かつて桓武天皇の第三皇子である葛原親王(かずらわらしんのう)がこの地に御所を造り付近の塚から御所を眺めていたことが由来とされています。この葛原親王は、先の文献に残る、日本での喫茶記録第一号とされている嵯峨天皇とは異母兄弟にあたります。史伝に精通し歴史上の成功あるいは失敗例を以て自らの戒めとしたといわれる葛原親王に倣い、日本茶の歴史に縁を感じる藤沢の地で、新たな挑戦を続ける茶師佐々木の想いを込めた新工場から日本茶を通して伝統と新しい文化を発信して参ります。